出典要覧

 「明解国語辞典出典要覧」「三省堂国語辞典出典要覧」という2つの出典要覧があります。


明解国語辞典出典要覧

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 「明解国語辞典出典要覧」は、『小辞林』改訂版から『明解国語辞典』初版に新たに追加されたものを中心とした見出し語の一覧である。

 この「出典要覧」は縦書きで約2万語を収め、内容は見坊豪紀『日本語の用例採集法』(1990)でも詳述されている。
 まず4ページの「凡例」があり、記号・略号の見方などが記される。
 続くリスト本体は5段構成で、見出しは付いていないが、(1)明国のノンブル、(2)見出し語、(3・4)先行書との対照結果、(5)出典・備考となっている。
 1段目は、次段の見出し語が『明国』で何ページに記載されているか、ノンブルが示される。
 2段目は『明国』の排列通りに、見出し語(表記)が並ぶ。
 3・4段目は『言苑』および『小辞林』と見出し語を対照した結果が、「○(採録あり)」「×(採録なし)」そして「△(一部分または異形態あり)」としてまとめられる[*1]。これを見ると、『明国』の母体となった『小辞林』に採録された見出し語でも「出典要覧」に記載されたものが相当数ある。
 5段目は出典を記す欄であるが、空白も目立つ。また、「余」「予」という記述は、山田忠雄などに持ち込まれた用例ではなく見坊自身の採集によることを示すが、「出典」としては機能しないであろう。備考も書き込まれ、語義区分の追加の記録や類書との対照結果なども記されている。
 リスト本体は23行×889ページ[*2]にわたり、「吾」に始まって「灣拓」に終わる。計算上は2万語強を収めるが、1語が複数行にまたがる場合もあり、実際には2万語を下回る程度と見込まれる。
 最終ページには「昭和二十二年十二月二十八日功了 見坊豪紀」と記され、「要覧」作成に当てられた期間がうかがえる。

  • *1 この○×対照結果には、かなり誤りが含まれている。実際にその項目が『言苑』『小辞林』にあるかどうかは、必ず原典に当たって確認のこと。
  • *2 390~399ページは存在しない。これは欠落ではなく、見坊がページ番号を書き込む際に飛ばしてしまったと思われる。389ページと400ページは連続している。

 2023/7/7公開


三省堂国語辞典出典要覧

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 「三省堂国語辞典出典要覧」は、『明国』改訂版から『三国』初版に新たに追加された見出し語の一覧である。『明国』のものと異なり、見坊自身による解説が乏しい。著書『辞書と日本語』でわずかに触れられたのみと思われる。

 『三国』の「出典要覧」は横書きで、綴じ合わせたノートに約5000語を収める。「1版三国 出典要覧」と手書きされた扉をめくると、まず「参照文献28種」として、頻出する出典の略称が3ページを使って説明される。
 続くリスト本体は4段構成で、各段に見出しが付く。
 1段目「語形」は、『三国』の排列通りに見出し語(表記)が並ぶ。
 2段目「出典」は、見出し語の出典を記す欄で、3~4割は空白である。「見坊」という記述もあるが、「明国出典要覧」における「予」と同様、いわゆる「出典」としてはみなしがたい。
 3段目「備考」は、『明国』改訂版との異同などが記されている。
 4段目「他辞書」は、先行する類書における見出し語の有無を対照した結果だと思われる。ただし、この欄をどのタイミングで何のために使用したかは説明されておらず、今後の検討を要する。
 リスト本体は14行×355ページで、「アーリアン人種」から「を〔助詞〕」を収める。複数行にまたがる見出し語はないようなので、5000語弱になる。
 表紙は劣化しているが、背に「1962」と微かに読み取れるため、1962年に作成が完了したと思われる。

 2023/8/1公開